- 大間原発訴訟
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2019.07.31 Wednesday
私が所属する市議会会派の政友会の視察研修で函館市役所を訪問、函館市が国と事業者に対して大間原発の建設差し止めの提訴を行っていることについて、担当の職員さんからレクチャーを受けた。
最初に断っておくが、政友会内には原発に関して異なる複数の意見が存在している。今回の視察の目的は原発建設の可否や原子力政策についてではなく、訴訟に踏み切った工藤市長のリーダーシップや議会の同意形成、また訴訟費用にふるさと納税を充当することにしたことの目的などについて勉強させていただくことである。
函館市は国の原発政策そのものに対して特定の立場をとっていない。原発建設凍結のための提訴を行っているが、市としていわゆる反原発集会などにも参加しておらず、あくまでも大間原発建設の無期限凍結が課題であるというスタンスである。
函館市の主張によれば、大間原発で過酷事故が起きた場合、津軽海峡を隔てて最短で23kmしかない函館市が危険にさらされ、観光産業や漁業、農業なの基幹産業がだめになり、地域経済が壊滅的な打撃を受けるだけでなく、市内全域667㎢が放射線物質に汚染され、それによって自治体機能の崩壊、市民の離散が生じ、函館市は自治体として壊滅するとのことだった。また大間原発の建設が、福島第一原発事故以前の審査基準によって許可され進められていることや、毒性が強く危険性が指摘されているフルモックスでの原子炉であること、大間原発の北方海域や西側海域に巨大な活断層があることなども問題視している。
福島第一原発事故後も事業者の電源開発が工事再開を表明したことで、市議会が大間原発建設の無期限凍結を求める決議を可決するなど市長と議会が一致して国や事業者に無期限凍結を求めたものの進展が図れなかったようである。提訴する当たり議会は全会一致でこれを承認している。
この裁判の特徴として、ふるさと納税を訴訟費用に充てていることが挙げられる。当初は寄付金として受付していたものを、平成29年度からふるさと納税で募集したところ、前年度92万円だった金額が3800万円に達し、これは金額ベースで全ふるさと納税の23%にあたる金額になっている。
市民の反応も提訴に肯定的であるほか、提訴表明から今年の3月末までにメールで市に寄せられたメッセージ1157件のうち、提訴を応援するという内容のものが1106件あるとのことだった。
裁判は現在までに20回の口頭弁論が行われているものの、これまでは函館市側がその主張を述べている段階で、被告側の実質的な反論はまだないとのこと。提訴から既に5年以上が経過しているが、この先裁判が長引くことも予想される。
ちなみに大間原発建設地である大間町と函館市は、大間原発建設凍結の提訴という事実があるにもかかわらず、自治体同士がギクシャクしているということはなく、大間町の住民が船舶を利用して函館市内の病院を受診するなど、お互いの交流は親しく続いているようだ。
原発政策では議員それぞれの考え方があっても、重大な事故から住民の生命や財産を守らなければならないという責任、そして何より函館市というまちを、将来の世代に引き継いでいくという強い意志が感じられた。自治体議員としての責務はなんであるか、その普遍的な課題を考える視察でもあった。
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